ここ最近、外国籍社員を部下に持つ管理職向けの異文化コミュニケーション研修プログラムに関する問い合わせが増えてきました。これは、各社でのグローバル採用やジョブ型雇用において外国籍社員の採用が推進されてきたことによる社内のマネジメント問題が顕在化してきたことに起因するものと思われます。

私は日本企業でありながら上司や部下が外国人であるという環境で長年仕事をしてきた背景から、日本人社員と外国籍社員が同じチームで仕事をしていくとぶち当たる様々な課題・チャレンジについて共感する部分がたくさんあるなと思いつつ、お話しを伺うことが多いです。

本日のブログは、外国籍社員の採用を積極的に進めてきた企業の管理職が、より良いチームマネジメントをしていくためのヒントとなる研修事例についてお話しします。おそらく、このブログのタイトルを見て読んでいる方は、社内で似たような課題感を持っているのではないでしょうか。

最近の傾向の一つとして、グローバル人材育成の観点からの異文化コミュニケーション研修ではなく、ダイバーシティ&インクルージョン推進のために、全社的な取り組みとして異文化コミュニケーションや異文化チームビルディング研修や異文化マネジメントスキル研修を取り入れる企業が増えたということがあります。海外赴任者向けの研修としての異文化理解研修は当たり前になり、次は国内での異文化チームビルディングに関する課題を解決するための研修を検討するケースが増えたのかもしれませんね。

最近担当した企業向けの研修例ですが、この企業では、グローバル採用を拡大する中、アジア国籍の社員を中心にEU国籍を含めた外国籍社員の活躍が進む中、日本人上司と外国籍社員の出身国のコミュニケーションスタイルの違いから来る問題が部門間で生じていたとのことです。異文化間の違いを理解している上司とそうでない上司が混在する中、外国籍社員の取り扱いにも差が生じてストレスを感じている社員もいて、双方にとって働きやすい環境を整える必要があったようです。

「あの人の上司は異文化マネジメントを理解して外国籍部下に接しているが、自分の上司は自分が日本語ができるからという理由で日本人と同じように扱ってきて不公平に感じる。同じアジアと言えども、言葉以外の違いもそれなりにあるのに、言語だけで日本人に対して当たり前のように期待することを自分にも求めてくるのはちょっとつらい。」

という心のつぶやきが早期離職に繋がらないとも言い切れないのです。

日本人社員だからといって一括りで扱えないように、外国籍社員だからといって一括りで取り扱うことができないことはみなさん理解されていることですが、思った以上に潜在的な「外国籍社員とのコミュニケーションに関するバイアス」があるものだなと研修中のグループディスカッションを通して見えてくるのが面白いです。人によって、日本人も外国人もみな同じですというスタンスの人もいれば、出身国によってハイコンテクスト文化、ローコンテクスト文化の違いを踏まえたコミュニケーションスタイルの違いあると思って自分が知っている知識をベースにコミュニケーションを図ろうとするスタンスの人、また、特に文化的な違いを意識することなく、直感的なコミュニケーションを図ろうとするスタンスの人等、それこそ参加者の数だけの多様性が見られました。

普段、思っていてもなかなか口にできないような課題を、グループディスカッションでお互いに自由に共有することで、多様な考え方やマネジメントスタイルから自身のスタイルを見つめ直すっていう機会は貴重ですねというコメントがたくさんグループの中で聞こえてきました。そうそう。研修って講師ばかりが先生ではなく、仲間も先生的な存在なんですよね。

参考までに研修の内容を紹介しますね。主なポイントは以下の3点でした。

  • 異文化コミュニケーションスキルに関するeラーニングを事前受講
  • 研修当日は、eラーニングコンテンツに基づいたディスカッション
  • ケーススタディを通したディスカッションと講師からのコメント&アドバイス

いわゆるビジネスコンサルタントが情報、知識、経験をレクチャーするタイプのセミナーではありませんでした。講師はウェビナーのファシリテーターとして、テーマに基づいたディスカッションをリードしまとめのコメントやアドバイスをするというスタイルで、参加者が主体的に学ぶ形式のトレーニングでした。それぞれの経験や現状課題からテーマを掘り下げることができて充実した時間が流れていました。

事前にeラーニングコンテンツを通して、「文化の理解」「異文化間におけるコミュニケーションスタイルの違い」「異文化間の働き方の違い」「異文化間のマネジメントスタイルの違い」等のポイントを学んでのウェビナー参加でしたので、研修では基本的なポイントのインプット学習は飛ばして、参加者の現場での経験を踏まえたグループディスカッションを通してお互いから学び合うスタイルは、研修時間をアウトプットに有効活用する視点でとても重要だなと改めて思いました。

講師についてですが、メインの日本人講師と外国人講師(複数)で、それぞれの視点からのコメントやアドバイスをさせていただくことにより、参加者が漠然とイメージしていたことを体系立てて整理したり、直接外国人の視点・経験から考え方の違いを知る機会となり、自身の異文化間チームマネジメント・スタイルを別の角度から捉えることができたようです。部下だと上司を気にして言わないようなことを外国人講師が自らの経験を通してコメントしたことではっとされられるポイントもたくさんあったようです。部下と関係作りができていないと安心して異文化ギャップについての改善点は伝えにくいのかもしれません。

研修終了後のコメントには、興味深いものがたくさんありました。

以下、参考までに受講感想の一部を紹介します。

  • 文化の違いは思ったより大きい。お互いの文化を理解し、尊重して業務コミュニケーションに取り組むことの重要性を学んだ。
  • 日本人部下と同様に外国籍社員にも個性や違いがあって当然であり、ついつい、外国人だからというバイアスで相手を見てしまう危険性が自分の中にあることに気づいた。
  • 文化の違いによるコミュニケーションスタイルの違いから、自身のマネジメントスタイルと部下と会話の中で共有することで、お互いに同じ目標に向かってコミュニケーションを取りやすくすることができることを知った。
  • 外国籍社員の多くが日本企業における不明確なキャリアパスに悩んでいることを知り、たとえ会社(部署)が明確なキャリアパスを示すことができなかったとしても、現在の業務が将来のキャリアにどう活かされていくのかを言葉でわかりやすく説明することで部下のモチベーションアップに繋がることを学べたことが収穫。
  • 本研修内容は、外国籍社員を部下に持つマネジャー向けとのことだが、外国籍社員やその他の管理職層や外国籍社員を同僚に持つ社員等、幅広い層に必要な内容であると思った。

最後のコメントにありますが、異文化間チームでのコミュニケーションは、外国籍社員の上司だけの問題ではなくて、外国籍社員の問題でもあり、また彼らの同僚の問題でもあります。広い視点から捉えると、部下が日本人だけというチームであったとしてもそこに存在する異なる文化価値観、コミュニケーションスタイルの違いは世代間でも存在するわけですがから、外国籍社員を部下に持つ管理職に対象を絞る必要はなく、広く適用できる研修だということがわかりました。

社会的な変化、働き方の変化等、コミュニケーション力の強化を通して会社の組織を変革していきたいとお考えの方がいらっしゃいましたら一度弊社にお問合せください。