今回は、2つのWeb会議システムを使い分けておこなった集合研修の事例をご紹介します。使用したツールは、ZoomとMicrosoft Teamsです。

以前にご紹介した『Googleスライド』を使った研修でのこと。(下記参照)

全2回の研修ながら、1回目と2回目で運営サイドは軌道修正によって大改善を遂げたのです。

何があった?

実施したのは1回目の緊急事態宣言が明けた直後でした。「感染者数が1日に何人出た」ということ以上に、心理的な緊迫感は大変なものでしたね。当研修の運営に際しても、万全な感染対策を前提に開催が決定し、すべてをリモートで実施することといたしました。

しかしながら、20人以上の規模のクラスをリモート化することは、当時は高いハードルでした。さらに、ティーチングをしながら画面で資料共有、チャット、ブレイクアウトルーム作成(大ルーム1つ+小ルームがいくつかあるイメージです)などのZoom機能の操作を行うのは、講師への負担が大きすぎました。そのため、私がZoom機能の操作を一手に引き受けるオペレーターとして研修に参加することにしました。 講師と私も密を避けるため、同じ建物にいますがそれぞれ「別々の教室から」リモートで参加しました。

この「別々の教室から」というのが、落とし穴となったのです。

集合研修のグループワークでは、各グループの議論の進捗を把握するために、講師は常にグループ間を歩き回り、必要なら助言を与え、喝を入れ、勇気づけていきます。当然リモートになってもその必要性は変わりません。

リモート研修ではこれをどのように行ったかというと、Zoom機能にあるブレイクアウトルームという小ルームを作成して行いました。大ルームにいる講師が各グループの小ルームを行き来し、対面のときのようにグループの状況を確認できます。この移動を講師が自由にできれば問題ないのですが、オペレーターの私にしか小ルームに移動させる許可権がないため、講師は出入りしたい時にその都度私に指示しなければなりません。しかし我々は「別々の教室」にいたのです…。この意思疎通がなかなかに難しく、とてもアナログな方法で運営をしていました。

1カ月後に、同じ受講生様を対象にフォローアップ研修を控えており、再びグループワークセッションを予定していました。1回目のやり方でもできなくはないが、できればもっとスムーズに運営したい、何かいい方法はないものか、と考えていました。

DXの推進に活路を見出す

コロナ禍が社会のIT化を急激に推し進めたのは客観的に事実と思います。他業界と比べて非常にアナログな教育研修業界ですが、遅ればせながら弊社でもDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めております。Microsoft365を導入し、社内の業務フローも大幅に刷新。その流れの中で、弊社もMicrosoft Teamsに正式に対応したのです。

Teamsを触ってみると、基本的な機能の必要なところは押さえていますが、細かい仕様でいろいろと違いがありますよね。Teamsの方が画質は良い印象でしたが、同時に表示できる人数がZoomでは最大25名なのに対し、Teamsは最大4名。数十人規模の研修をTeamsだけで行うには力不足という印象を受けました。(※いずれも当時の仕様)しかしながら、プライベート研修や小規模グループ研修を行うには十分…。

ソリューションは、「良いとこどり」

フォローアップ研修の概要をざっくりとご説明します。3時間の研修を、1時間ずつの3つのセッションに分けます。

セッション 1: 日本人講師(メイン講師)による全体セミナー(大ルーム)

セッション 2: ネイティブ講師とのグループワーク(大ルーム+小ルーム①)

セッション 3: 別のネイティブ講師とのグループワーク(大ルーム+小ルーム②)

セッション2と3では、受講生は自身の所属グループを担当する講師のもとへそれぞれ行かなければなりません。1人当たり、2回のセッションで2つの小ルームを行き来する必要がありました。前回と同様であれば、Zoomでブレイクアウトルームを作成し、オペレーターの私が受講生を振り分け、さらに日本人講師の見回りも指示を受けながら振り分けることとなります。

これを、ブレイクアウトルームを使わず行うために思いついたアイディアは、

「各ネイティブ講師分のミーティングルームを、Microsoft Teamsで作る」

各セッションで受講生は、自身の振り分けられたミーティングルームのリンクをクリックすることで自由に出入りするのです。日本人講師が各グループの様子を見回るのも、講師自身がそのリンクをクリックするだけなので簡単。この方法であれば、ティーチングを行いながらでも過重な負担にはならず、講師自身での対応が可能となりました。

結果は?

大成功でした。受講生はそれぞれの時間にどのリンクをクリックすればいいかわかっているので、自発的に移動してくださりました。見回りをする日本人講師も自身で各グループに出入りし、適切なアドバイスをすることが出来ました。研修規模も大きくプレッシャーがありましたので、研修終了直後は充実感でいっぱいだった記憶が今も鮮明に残っています。

置かれた状況と制約条件の中で最大限の研修効果を発揮させる。リモートが主体となった今、私たちには研修内容そのものだけでなく、システム的な面を含めたフレームワーク作りでもそれが求められています。今回の事例も、ZoomとTeamsそれぞれの長所をベストミックスさせることで生まれました。もちろんこれは当時の仕様に基づいたアイディアですし、実は当時から実装されていたのに私の勉強不足で活かせなかった機能もあったかもしれません。いま同じ研修を企画するとしたら同じ手法は使わないでしょう。また違うベストなやり方があります。常に多方面にアンテナを張り巡らし、研修にフィードバックさせていく姿勢が私たちに求められています。

これからも日々研鑽を積んでいきたいと思います。