コロナ禍で、これまで当たり前だった仕事や働き方ができなくなるほど社会が大きく変化し、直接的な人的交流が難しくなった昨今、ますますグローバルコミュニケーションの教育が「不要不急」から「必要緊急」のものとなってきたと感じています。皆さんの職場はいかがでしょうか?

ご存知のように、最近はもうすっかりオンライン会議が主流となってきました。そのおかげで、場所や移動時間等を考慮しなくても良くなった、業務効率が上がった等々、以前と比べてメリットが多いように感じている方も多いと思います。そんな中で今、日本人ビジネスパーソンが抱える、ある問題をご存知でしょうか。

それは、“外国籍のスタッフから見て、日本人スタッフはチームへの貢献が足りないと思われていること” です。なんとも残念な話ですが、このことに入る前に、そもそも「チーム」とは何かを、「グループ」と比較しながら明確にしておきたいと思います。

「グループ」と「チーム」の違いとは

一般的に、複数の人が集まって物事に取り組む点は「グループ」と「チーム」の共通点ですが、組織行動学では別のものとして以下のように定義されています。

○ グループ:「目的や目標を持たない、共通する性質を持つただの集団」

○ チーム:「目的や目標を持ち、それを達成するために一致団結して活動する集団」

「チーム」についてさらに踏み込んで説明をすると、組織の部あるいは課といった「常設チーム」と、プロジェクトあるいはタスクフォースごとに協働することを目的にした「特設チーム」があります。今日のビジネス環境のような変化に迅速に対応して成果をあげるには、いずれのチームでも強固な団結力が不可欠であり、共通目標に向かって協調して取り組めること、それが成功のポイントです。

さて、このようにチームの成功のポイントがわかりましたが、チームに “グローバル” という要素が加わると、どのような問題に直面するのでしょうか?

まず、国籍が違うメンバーとチームを編成するということは、文化や価値観の違い、国民性、宗教上の決まり、仕事の進め方、目には見えない様々な違いがチームに影響します。ダイバーシティの醍醐味である、“違いをプラスに” という考え方は、私も全く同感ですが、実際の現場の声は、そんな理想とは遠い印象を受けます。

ここで、オンライン会議を例に挙げてみましょう。直接的な人的交流が当たり前であった以前は、多少の英語力やコミュケーション力の不足があっても、もともとの人間関係やその場の雰囲気でうまく切り抜けられていたかもしれません。しかしオンライン会議では、会ったことのない人が登場したり、知人だったとしても画面越しに登場すると距離感を感じてしまう、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。さらに厄介なことに、会社によっては画面がフリーズしないよう画面をオフにして、通信負担を減らすようなスタイルを取り入れているところも少なくありません。顔を見て話すのと見ないで話すのとでは、大きな違いがありますよね。このような状況で、誤解のないように英語でコミュケーションを取り、外国籍のスタッフと仕事を円滑に進めることは、以前とは比べ物にならないほど難易度が上がっていると言えます。

そんなハードルが高くなったグローバルチームでのコミュニケーション。それを突破するためのポイントは何か?実は、英語以外にも色々と重要なことがあることが判ってきました。その中で、特に重要な要素を3つ取り上げたいと思います。

1. 相手の文化を理解して、差異に配慮する力

個人的には、英語力よりも重要な要素だと思っています。互いの文化の差異を理解し、相手に何をどこまで言えば良いのか、どういう風に伝えれば伝わりやすいのか、そのような配慮あるコミュニケーションの取り方が重要となります。

ある英語の堪能な受講生の話で、流暢な英語で会議を進めていたにも関わらず、“あなたの英語はわかりづらい。もっと我々に配慮してわかりやすく言ってくれ” と、チームの英語ノンネイティブのメンバーから注意されたそうです。まさにこの話は典型で、正しい英語をきれいに話せても、伝えたい相手に理解してもらえなければ話は先に進みません。様々な国籍の人材で形成されているグローバルチームで、互いの文化を尊重しながらコミュニケーションをとる力は、高い英語力を身につけることよりも価値あることだと思います。

2. 自分の意見をしっかりと持つこと

当たり前と言えば当たり前ですが、これができずに外国籍のスタッフから指摘されてしまうのが実情です。そもそも日本人の特徴として、忖度する、長い物には巻かれろ、年功序列、など、自分の意見を押し殺すことで、組織としての一体感やメンバーとの協調性を保つことを重んじる傾向があります。しかし残念ながら、これがグローバルチームでは落とし穴となってしまいます。

以前に聞いた話で、グローバルに躍進している日本企業で勤めていた事業部長をヘッドハンティングしたところ、オンライン会議の場で、メンバーの意見を傾聴するだけで自分の意見をまったく言わなかったそうです。その場にいたメンバーは、“なぜこの人を採用したのだろう?なぜあの企業はグローバルで成功しているのだろう?” と不思議に思われたそうです。おそらくその方は、様々な意見を収集して状況を俯瞰した上で意思決定をしようと思っていたのでは、と私は推察します。しかし実際はどうであれ、そのような印象をメンバーに与えてしまうこと自体、チームでの業務に支障が出てしまうリスクが高まりますね。

3. わかりやすく伝えること

英語が流暢だったとしても、ダラダラと話が長くてポイントが分かりづらかったり、伝え方が論理的でなかったりすると、一般的に察する文化圏ではない外国籍のメンバーには要点が伝わらないのは言うまでもありません。

たとえTOEICのスコアが高くともわかりやすく伝えることができないと、実際の会議の場では “ So What?”、“What do you mean?” などと頻繁に聞き返されてしまいます。ミーティングスキル研修などに同席して見学をしていると、まさにこの状況はよく目にします。基本的にスキル研修は一定の英語力をすでにお持ちの方が受講することがほとんどですが、上記のように講師から聞き返される様子はよく見かけます。それほどに、わかりやすく伝える力は重要で、逆に言えば、英語力がさほど高くなくても相手にわかりやすく伝える力のある方は、なんとかなってしまうのもまた事実です。

いかがでしたでしょうか。グローバルチームで求められる力とは?と問われると、まず英語が堪能でなければならない、という先入観を持たれている方も多いと思いますが、ポイントはそこだけではありません。グローバルチームに参加して苦労されている方は、今一度、ご自身のコミュニケーションの取り方を見直されてみても良いのではないでしょうか。