今回は、新入社員及び若手社員向けの研修で、コロナ渦に伴って多く寄せられたお悩みの事例をご紹介します。

担当して5年になるお客様のA社では、毎年秋に、新入社員と若手社員(2年目~3年目)向けの「英語力の向上」を目的とした語学研修を開催させていただいております。新入社員は、基本的な英語力・ビジネス英語力の強化、若手社員については、実務に運用するための英語ビジネススキルの習得を目的としていました。

昨年も、担当のH様よりご連絡をいただき、内容確認や新入社員の方々についてうかがい、リモートでの実施に関して話していた際、ふとこんなことをおっしゃられました。

「今年の新入社員は4月からリモートワーク続きで、社内の関係作りが十分とは言えないんですよね…。離職につながらないと良いのですが…。」

詳しくお話を聞くと、

・大人数の研修が中止になり違う世代との交流がない

・社内懇親会や食事会などもすべて中止

・リモート研修が主流となり、聴講が中心または少人数での研修のみ

といったことが原因のようで、新入社員同士だけではなく、2、3年目の年齢の近い先輩たちとの交流や関係作りを行える場もなかなかないという事でした。

このようなお悩みを抱えていらっしゃった研修担当者様は、昨年多かったのではないでしょうか。リモートワークの欠点として、コミュニケーションや関係構築の難しさがあると思います。しかしながら、これから様々なことのリモート化が目に見えている今、この問題を「仕方ない」と片付けるのではなく、逆手にとってプラスにできるよう取り組んでいきたいですよね。

そこで今回のA社へは、「新入社員研修と若手社員研修の合同実施」を提案させていただきました。例年の研修では、世代ごとで別々の開催をしていましたが、今回は以下のことを考慮しながら新しい様式に挑戦してみることを提案しました。

1.英語力の向上と世代間交流の両方を叶えられること

2.大人数においても交流を深められること

3.英語力の差、経験の差

上記を考慮したうえでの私のプランニングは、世代別セッション(それぞれの目標を達成させられる内容)と、合同セッション(世代別セッションで学んだ内容を活かす内容)

の2本立てです。どちらも小グループでの活動で、必ず一人一人が他者に声がけして協力しなければならないタスクが与えられます。さらにグループは定期的にシャッフルし、多くの人とワークをする状況を設定しました。

結果としては、「世代別と合同に分けたことでメリハリが生まれ、集中力が向上」「両セッションに関係性を持たせたことで、学習モチベーションが継続」「小グループ活動かつ、メンバーの定期的なシャッフルで緊張感が持続」「レベル差があることで、現状の英語力を認識し学習モチベーションが向上」「経験の差があることで、助け合いが自然に生じる」等々。

このような結果に加え、グループ内でのLINEグループの作成などの連絡先交換が生じ、連絡を取り合い協力してタスクに取り組んでもらうことに成功しました。あえてこちらからグループ内の連絡方法などは指示せず、自発的に行動が出来るようにと考えていましたが、思った通りに積極的な交流へとつながりました。

当初の、「英語力の強化」という目的と成果だけではなく、企画をアレンジするだけで、「同期、世代間の関係の強化」「先輩、他者との差から刺激を受けて、学習や仕事面でもモチベーションが向上」などといった成果を上げることができ、対面研修以上の結果が出たことに大変嬉しい気持ちでした。企画者として、少しでも多くの気づきや学びを得てほしいという思いで1つ1つの研修をデザインしていきますが、個人的にも自慢できる事例の1つとなりました。