今日は、「え!こんなこともやってるの?」と思っていただけるような事例を一つご紹介したいと思います。 

今年は思わぬコロナ禍の襲来で、ほとんどの研修が否応なしにリモートへと切り替わっていきましたが、そんな中でも教育研修効果を最大化できるよう、今まで以上に懸命に企画立案に取り組んできました。 

リモート研修ならではの悩み… 

緊急事態宣言の解除直後に実施した、とある研修の振り返りの席。ご担当者様からは、ありがたいことに研修内容に大変満足しているとの声をいただきました。しかしながら、内容とは別に一つ残念な点があるとの声が。 

「集合研修では、普段会うことのない違う拠点のメンバーが一堂に会します。そこでは休み時間やランチ、喫煙室(吸う人だけですが)で、思わぬ横のつながりが生まれるんですよね。そんな新たな交流は、仕事にも良い影響を与えるので、我が社では大切にしていました。でもそういう場を設けるなんて、リモートでは望むべくもないんですよね。きっと…」 

思い付きを、ソリューションへ 

研修企画開発部の人間として、ご担当者様のこの言葉に私は燃えました。何とかしたい。 

確かにリモート研修では、休み時間になると皆さんカメラはオフ、ミュートを掛けてトイレに行くだけ。会話の一つもできない環境だと思います。これでは横のつながりはおろか、下手をするとメンバーの名前を覚えきれない方さえいるかもしれません。さて、ここでどうやって横のつながりを生み出そうか… 

そんな時になぜかふと思い出したのが、前回の冬季五輪で善戦したカーリング日本代表です。真剣に試合に向き合いながらも、途中のブレイクタイムで「そだねー」なんて言いながらおやつ食べてましたよね。そう、あれは『もぐもぐタイム』! 

このクライアント様の次回研修に、『もぐもぐタイム』を入れましょうと提案しました。伊達や酔狂で言っているわけではありません。交流の場が自然に生まれないのなら、枠組みとして作ってしまえばいいのです! 

具体的には、事前に受講生の皆さんに、お茶とお菓子を持参するようにお願いをします。そしてタイムテーブルに10分間、本当に『もぐもぐタイム』と記載します。この時間はブレイクタイムではありません。「研修の一環として」他のメンバーに自分の持ってきたお菓子を紹介し、いかにおいしいかプレゼンするという「タスク」が課されます。まじめに取り組まねばなりません!できるだけ珍しいお菓子や、ご当地のお菓子を持ってくるのがキモ。このアイディアにはご担当者様も大いに乗り気で、ぜひやってみようと言ってくださいました。 

そして、研修当日 …

研修の見学をしていると、「これなんの時間?(笑)」なんて言いながらも、皆さん一生懸命ご当地お菓子をプレゼンしていました。真面目な質問や気の利いたツッコミが繰り出され、しまいには「いやいやオレの方がうまいはず」「じゃ食べてみろ!」「ムリだよ(笑)」なんて具合に会話が盛り上がっていく過程で、確実に「横のつながり」が醸成されていくのを感じました。 

成功です。 

思わぬアイディアから生まれた企画ですが、私を信頼して任せてくださり、かつ面白がって実施させてくださった担当者様に心から感謝です。何とかその気持ちにお応えすることができました。受講生の皆さんのこれからのご活躍を、私も密かに楽しみにしております。 

その後 …

『もぐもぐタイム』はその後、思わぬ企画の広がりを見せました。とある上級者向けの終日研修で、ランチタイムにこのアイディアを応用しました。講師と受講生が、昼食を摂りながら画面越しに英語でスモールトークをトレーニングする時間を設置。講師にはできるだけ様々な国の時事ネタを振るように仕向け、仕事だけでなく教養も問われるようなパートを設けました。 

私は30代前半で行った海外出張の際、ワーキングディナーの席で諸外国のニュースの話題を振られ、「日本人はこのことについてどう考えているの?」と問われて頭が真っ白になり、気の利いたことを何一つ言えなかった苦い過去があります。そんなことを思い出しながら、同じような経験を受講生様がしなくて済むよう、研修の場で鍛えてもらえたらと思い、組み込みました。 

必要なら備えればいい。できないなら練習すればいい。 

受講生様に必要なトレーニングをゼロベースで考え、先入観や思い込みにとらわれずに提案する。それがIESのDNAだと、かつて先輩に教わりました。私もそれを受け継げるよう、これからも日々精進したいと思います。