今回は、『グローバル会議参加の心得』というテーマを取りあげてみたいと思います。オンライン会議の導入が加速し、国内に居ながらして海外とのやり取りが容易になったことから、以前よりもグローバル会議への参加が増えた方、これを機に参加する機会を得た方も多いのではないでしょうか。そんな中、「さぁ、急いで英会話スクールやオンライン英会話に申し込まなくては!」という方に、ぜひご一読いただきたい内容となっております。

そもそも、日本人のみで行なう会議とグローバル会議とでは何が違うのでしょう。使用する言語の違いはもちろんですが、もう一つ大きな違いとしてあげたいのが『参加者の文化的背景が多様であり、常識・非常識が異なること』です。グローバル会議なんだからそんなの当たり前のこと、と思われるかもしれませんが、意外とこのことをしっかりと意識して配慮することができる人は多くありません。以下に、具体的にどのような心得を意識して参加することが望ましいかをあげてみたいと思います。

心得① 『参加者全員にとってわかりやすい英語で話す』

グローバル会議に参加するにあたって、皆がネイティブと同等の英語力を有するだろうと想定しておられる方も少なくないかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。グローバル会議への参加者は、我々日本人も含め、英語力がさほど高くはない文化圏の方々も多くいます。そのため、ネイティブレベルの英語力がかえってマイナスに作用することもあるのです。それを象徴するような私の経験談を、1つ例としてお話ししたいと思います。

以前参加したグローバル会議でマーケティングの報告をしていた際に、英語ネイティブの外国人の上司が「You missed the boat.」と言いました。私は「なんでボート?」と、意味がわからず困惑して言葉が詰まってしまいました。お恥ずかしい話ですが、当時の私はネイティブが使う慣用句をまるで理解していませんでした。(ちなみに、”Miss the boat” は「チャンスを逃す」という意味です。)ネイティブのみでの会議ならば問題ないですが、参加者の英語力に合わせてわかりやすい英語を使う配慮が求められた一例です。(注:決して自分を擁護しているわけではありません(笑))私のこのケースは意味が通じないことで問題につながるようなものではありませんでしたが、例えば何か重要な報告が会議の中でなされ、数名の参加者が違った認識をもって自身のチームに報告し、問題につながるといったこともあり得ます。全体で認識を統一させるために皆にとってわかりやすく話すことは、ネイティブレベルの英語力よりもはるかに重要であると言えます。

心得② 『ゴールを知り、期待値を知る』

日本人のみの会議では、上位・年配の者を立てるという文化的意識が強く、自分より上位の者を立て、上位の者の発言を待ち、指名されなければあまり発言をしないという傾向が強くあります。また、会議が議論のみで終わり、結論が出ないままに終わるということはよくあることです。

一方グローバル会議では、年齢や役職に関係なく、会議の参加者であればどんどん意見や提案をします。グローバル会議は、議題についてその会議中になんらかの意思決定をすることをゴールとしているため、それに向かって参加者の全員は発言をして貢献することが求められています。このことを知らずに、参加しているにもかかわらず指名されない限り発言をせずにいると、自分の意見がない無能な人、熱心さや情熱が足りない人、何を考えているかわからない不思議な人というような印象をもたれかねません。

会議自体の目的(ゴール)をしっかり理解し、自身が求められていることを意識しながら会議に貢献することは、参加者として覚えておくべき心得の一つです。

心得③ 『コミュニケーションをとることを遠慮しない』

グローバル会議において、自身の意見や提案を伝えることは最優先事項です。それほど英語が得意でない人であっても、発音や文法の間違いなど気にせず、とにかく伝えることに注力します。口頭での意思の疎通が難しい場合は、チャットで伝えたりしていることもよくあります。グローバル会議の参加者の多くは、英語力が低かったとしても、そのことを恥ずかしいと思ったり、文法や発音の間違いを恐れたりしません。会議で自分達に求められている期待値を理解し、結果を出すことを優先しているからです。

例えば、インド人の話す英語は早口で巻き舌傾向という特徴がありますが、会議中に聞き手から何度聞き返されても彼らは全く動じず、何度でも言い直します。そんな場面はグローバル会議では当たり前に起こります。しかしながら、我々日本人の感覚ではこれがなかなか難しいですよね。自分の英語では聞き取ってもらえないだろうと発言を控えめにしてしまったり、相手の発言が聞き取れないときは、何度も聞き直すことは失礼にあたるのではないかと遠慮して、とりあえず笑顔でその場を受け流してしまったり、日本人の陥りがちなパターンではないでしょうか。

しかし、その場で結果やアクションを求める傾向の強いグローバル会議では、この姿勢は大きなリスクとなります。相手の言っていることがわからないのにそのまま流してしまい、後になってお互いの認識に差があり、相手からは自分が賛同したと誤解をされてしまっていたというようなトラブルは、何度となく聞いたことがあります。日本人が美徳とする謙虚さ、奥ゆかしさ、和を貴ぶ姿勢は素晴らしい文化です。しかしグローバルビジネスにおいての会議では、それを出しすぎると思わぬトラブルとなり得ることがあると言えるでしょう。

いかがでしたでしょうか。グローバル会議のために英語を勉強して、TOEIC800、900点以上のスコアを取ることができても、実際の現場でなかなか活用することができないという話は、一度は聞いたことがあると思います。英語はあくまで物事を伝えるツールであり、それを活用して会議で活躍するには、グローバル標準の意識、心得もセットで備える必要があります。英語力を高めることはもちろん重要ですが、会議への参加姿勢、コミュニケーションの取り方を内省し、グローバル標準に近づけていくことが、成功への第一歩ではないでしょうか。